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夢の始まり
2008年08月21日 (木) | 編集 |







交わる指を今度こそは繋いだ。そう思った。




いまだにうなされるその夢。


爆風にあおられ、非常階段の間を落下していく兄さん。    


伸ばされたその腕に僕の指はどどかなかった。


僕を見つめる紫紅の瞳が見開かれ、やがて闇に吸い込まれていった。




「兄さぁぁぁーん!!!」




声の限り叫んでも時は無常に動いていく。

かすかに触れたと思ったその感触だけを残して僕は生き残った。

兄さんがくれた命だった。







あの時から僕の運命は変わった。

命だけは残った。

でも幸せな時間は終わりを告げ、夢は覚めてしまった。そう思った。

あの時繋げながった指のように、僕らの心は離れてしまった。




兄さんの記憶は戻り、銃を僕に突きつけた。





しかし、記憶が戻った後も兄さんはまた僕の命を助けた。


夢はまだ続いていたように思えた。


弟でいていいというあの人の言葉に僕はすがった。


夢は甘く、幸せは僕を蝕んだ。




恐れながらも信じた。




信じながらも恐れた。この夢が覚める日を。









「お前なんか弟じゃない!!」



投げつけられたロケットが床に触れ、音を立てる。




夢はもう覚めてしまっていたのだ。あの時に。


今じゃない。兄さんの腕をつかめなかったあの時に。


幸せな幸せな夢は。





それでももう僕は夢の世界でしか生きられない。


兄さんだけが僕の全て。





裏切った黒の騎士団の前に身をさらす兄さんを蜃気楼で助け上げた。


そこに居たのは兄さんの姿をした抜け殻だった。




炎のように命を燃え上がらせていた兄さんは、全てを諦め死を望んでさえいた。

もう何も残っていない。

全てをあきらめた眼差し。




駄目だよ、兄さん。


僕が命を吹き込んであげるから。


だから諦めないで。




僕が、『生きる』と言うことを思い出させてあげるから。


この命をもって兄さんに希望をあげるから。










交わる指を今度こそは繋いだ。そう思った。



敵機全てを振り切って今度こそ僕は兄さんの命を救えた。


後悔は無い。





兄さんにもらった命だものね。

ちゃんと兄さんに返せて嬉しいよ。




もう、体の感覚さえなくてその手を求める事は出来ないけれど、

兄さんの優しい眼差しを見たら、それだけで満足してしまった。




今度こそ繋いだ。


その指ではなかったけれど、心を。




だから僕は満足。




体が冷たくなっていくのを感じたけれど、僕の心には優しい温かさが広がっていた。




また僕は夢を見る。美しい夢を。



これは死ではなく、永遠の夢の始まり。



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